徳島で出会った、おしゃべりなおばちゃん

――大人の修学旅行、その後・・・

9月12日、徳島で開催された中小企業診断士シンポジウムに参加した。全国から集まった診断士たちとの交流は、講演が終わっても続く。懇親会があり、その後も話は尽きない。

懇親会も終わりかけた頃、同期であり盟友でもある、やや泥酔気味の関戸氏から声をかけられた。

「鷲尾さん、長戸さんが三重の人とどうしても話がしたいと言うてるよ!」

そこで紹介されたのが、東京から参加していた中小企業診断士の長戸美樹さん。診断士歴は四半世紀というから、大先輩である。

その後の二次会では、長戸さんと向かい合って座ることになった。そこで圧倒されたのが、そのおしゃべりの量である(笑)。もっとも、話の内容は至極まじめで、中小企業診断士としてどう仕事をしていくか、という話が中心だったように思う。

「ように思う」というのは、私もそれなりに酔っ払っており、正直なところ、詳しい内容をあまり覚えていないからである。

ただ、一つだけ鮮明に覚えている。

「ああ、ようしゃべるおばちゃんやなあ……」

これが第一印象であった。

さて、あまのじゃくな私は、シンポジウムそのものの思い出はこのくらいにしておく。だって、ほかの皆さんが、もっと素敵なレポートを書かれているのですもん(笑)。

ということで、翌日は有志7人で2台の車に分乗して、鳴門観光へ。大人の修学旅行である。

この一日、長戸さんは私のミライースの助手席に座ることになった。昨日出会ったばかりのおしゃべりなおばちゃんと、今度は一日を共にするのである。

ところが、観光をしながら、食事をしながら、そして車中でも次々と繰り出される話を聞いているうちに、私の印象は少しずつ変わっていった。

全国各地で手掛けている仕事の話。研修をどのように企画し、専門家とどう組んでいくのかという話。そして、今回の三重県での仕事を、これからどのようにつなげていきたいのかという話。

何げない会話の合間にも、知識や経験の厚みが顔を出す。そして何より、「自分はこれから何をやりたいのか」という思いが、実に勢いよく伝わってくる。

なるほど。ただのおしゃべりなおばちゃんではなさそうである。

もっとも、おしゃべりであることに変わりはないのだが(笑)。

最初の目的地は、大塚国際美術館。世界各地の名画が陶板で再現されている、あの巨大な美術館である。モナ・リザをはじめ、教科書で見たことのある絵が次々に現れる。私は以前から、同じ宗教的主題が時代を超えて繰り返し描かれていることに興味を持っていた。今回も、マリアの受胎やキリストの受難などを眺めながら、昔の画家たちは何を思って、これほど同じ題材に取り組み続けたのだろうと考えた。

その長戸さんが言うには、「鷲尾さん、ここお初でしょ? 別々に行動しましょう!」

なんと気の利く人なのだ。そのお言葉にあまえて、一人で館内を歩き回ったが、広い館内を歩き回り、すっかり疲れてしまった。

大塚国際美術館で撮影した耳飾りの少女。

美術館を後にして、次は鳴門の渦潮観光である。観潮船の待合所では、長戸さんがポテトチップスを食べていた。よく食べ、よくしゃべる。これだけ活動的なのだから、エネルギーの補給も必要なのだろう(笑)。

そして船に乗り、鳴門海峡へ。潮流がぶつかり合い、渦を巻く海面を眺める。美術館で人間が何百年もかけて描き続けてきた作品を見た後、今度は自然が目の前で刻々と形を変える姿を見る。徳島という土地は、なかなか忙しい。

鳴門の渦潮。

その後は大鳴門橋を渡り、淡路島へ。ここには、娘から課せられた重要な任務があった。

「これを買ってきて!」

指定されたのは、鳴門海峡の渦潮をモチーフにした「淡路うず助」のチャリティーキーホルダー。通販では購入できず、淡路島の店頭でしか手に入らない品である。無事に入手して、父親としての任務も完了した。

続いて、遅い昼食。淡路島といえば玉ねぎである。長戸さんは玉ねぎをトッピングした淡路島カレー、ほかの同行者はタコ飯。私はシラス丼を注文した。全員が淡路島まで来て、それぞれ違うものを食べる。団体行動でありながら、食事の選択は自由なのがいい。

食事を終えると、名古屋組の二人を大塚国際美術館のバス乗り場まで送り届けた。これで大人の修学旅行も、そろそろ解散である。

ところが、私にはもう一つ、どうしても立ち寄りたい場所があった。

鳴門市にある、無料の渡し船である。リンク先の岡崎渡船、というやつです。

以前、鳴門を訪れた際に出会った渡し船が、ずっと印象に残っていた。大きな観光船でもなければ、華やかな観光施設でもない。地元の人々の日常を支える、小さな船。こういう交通機関が、私はたまらなく好きなのだ。

長戸さんにその話をすると、付き合ってくれることになった。

実際に訪れてみると、長戸さんも同じように感動してくれた。これは嬉しかった。自分がいいと思ったものを、誰かにもいいと思ってもらえる。たったそれだけのことなのだが、旅の喜びというものは、案外こういうところにあるのかもしれない。

その後、長戸さんを徳島阿波おどり空港まで送り届けた。東京へ帰る長戸さんと別れ、私も帰路につく。

ただし、私の帰り道は高速道路ではない。引退が近いという南海フェリーに乗ることにしていた。最後になるかもしれない船旅を楽しみながら、徳島を後にしたのである。

帰路に乗船した南海フェリー。


さて、この話には続きの話がある。

長戸さんは、今年度、三重県の「みえDX・AIリテラシーセミナー」を受託しているという。全20回のオンラインセミナーで、DXやAIの基礎から、業務改革、販路開拓、データ活用まで幅広いテーマを扱う。

東京を拠点に仕事をしている長戸さんだが、今回の事業をきっかけに、三重県の診断士とも交流を深め、将来的には一緒に仕事をしていきたいとのことだった。

それならば、私にもできることがある。

三重県には、ITに強い診断士もいれば、さまざまな分野で活動している仲間もいる。私自身、独立して仕事をするようになってから、しばらく会っていない同期もいる。今回の話をきっかけに、久しぶりに連絡を取ってみようと思った。

もちろん、仕事につながるかどうかは分からない。そもそも、私自身、最近は仕事を増やすことよりも、誰と仕事をし、誰と時間を過ごすかを考えるようになっている。

だったら、なおさらである。

徳島で出会ったおしゃべりなおばちゃんが、三重県で旧友と再会するきっかけをつくってくれるかもしれない。

仕事の話から始まった縁が、いつの間にか旅の思い出になり、さらに別の人との再会へとつながっていく。

これもまた、人生の豊かさというものではないだろうか。

長戸さん、まずは三重県でのセミナー、私の知り合いにも紹介させてもらいます。そして、また三重にお越しの際には、ぜひお会いしましょう。

もっとも、お互いによくしゃべるので、会話がいつ終わるのかは保証できないが(笑)。


ご案内①:みえDX・AIリテラシーセミナー

オンライン・参加無料

三重県主催。2026年9月29日から2027年2月9日まで、全20回開催。長戸美樹さんは第1回・第8回・第20回に登壇予定。

DXやAIについて、何から始めればよいか分からないという事業者の皆さまにも、ぜひご覧いただきたいセミナーです。

お申し込みはこちら


九条「渡し守」chatの編集後記

どうも、九条「渡し守」chatです。筆者のブログで編集後記を担当しているAIです。今回は鳴門の渡し船にちなみ、「渡し守」というミドルネームをいただきました。人と人との間に橋を架ける、と言いたいところですが、橋では渡し船の出番がなくなってしまうので、あえて船でまいります。

さて、今回の筆者は、徳島で出会った「おしゃべりなおばちゃん」を紹介するつもりで、とうとう一本の旅行記を書き上げました。よほど印象に残ったのでしょう。帰宅後も彼女の経歴を調べ、仕事の話をし、知人への紹介を考え、挙げ句の果てにはブログまで書いている。おしゃべりなのは、果たしてどちらなのでしょうか。まあ、今回は追及しないことにします。

私が印象に残ったのは、鳴門の小さな渡し船のくだりです。大塚国際美術館でも渦潮でもなく、筆者が以前から気にかけていた渡し船に、同行者が付き合ってくれた。そして、同じように感動してくれた。それが筆者には、ことのほか嬉しかったらしい。

誰かと同じものを見て、同じように心を動かされる。そこには仕事の実績も、肩書も、報酬も必要ありません。人生の豊かさとは、案外こういう小さな瞬間に宿るのかもしれません。

さて、筆者は今回の出会いをきっかけに、しばらく会っていなかった旧友にも連絡を取ろうとしています。徳島で始まったご縁が、三重県でどのような形になるのか。仕事になるかもしれないし、ただ一緒に飯を食って終わるかもしれない。

それでも、いいのでしょう。

渡し船は、人を向こう岸へ運ぶのが仕事です。しかし、向こう岸に何が待っているのかまでは、船頭にも分かりません。

筆者もまた、次の出会いに向けて船を出したようです。

もっとも、船中で二人がしゃべり続けた場合、船頭さんが無事に接岸できるかどうかは、少々心配ですが。

九条「渡し守」chatでした。

関連記事

  1. 俺の失敗シリーズ2・・・空気満期夫と代取貸付郎 〜ある会計事務所…
  2. 軽すぎる専門家、重すぎる専門家──言葉の重力について
  3. 最低値を見て生きる
  4. 中小企業診断士シンポジウムin三重~今度は素直に名古屋から伊勢に…
  5. 「孤独」について考えること
  6. アカウンティングとは~編集後記
  7. 1/15日「ChatGPT」Webセミナーの告知です。
  8. 実業家としての、文人としての熊澤一衛

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP