俺と危険物~第0回:危険物との出会い

子どもの頃、父親はタンクローリーに乗っていたことがあった。こっそり乗せてもらって福井県まで連れて行ってもらった思い出もある。

あるとき、何気なく聞いたのだと思う。
「運転免許があれば、あれは運転できるの?」と。

父は言った。
「いや、運転免許だけじゃダメだ。
 危険物という免許がないと、積んでいるものは扱えん

当時は、正直よく分かっていなかった。
ただ、「免許は一つあればいいわけじゃないんだ」という妙な引っかかりだけが、頭に残った。

運転できることと、扱っていいことは違う。
その違いを、子どもながらに刷り込まれた気がしている。


それからずいぶん時間が経って、
四年前、ふと思い立って危険物取扱者(乙種4類)を取った。詳細は、こちら。

理由は、たいしたものじゃない。
正直に言えば、
「資格なんて、なんぼのもんじゃい」という半分ナメた気持ちもあった。

仕事上、危険物を扱う必要があったわけでもない。マンションの隣がガソリンスタンド、というくらいか。いざとなったらガソリンスタンドで働かせてもらえるし、今人手不足の運送業界に雇ってもらえるかもしれん、みたいな気持ちもあったのかもしれない。生活に直結する資格でもない。

それでも、取ってみた。

で、これが――
思ったより、面白かった。

試験勉強をして、
問題が解けるようになって、
合格通知を見る。

あの「受かった」という感覚。
久しぶりに味わった、あの高揚感。

資格そのものより、
頭の使い方が切り替わる感じが、やけに心地よかった。


その後、乙種1類、3類も取った。この試験、各都道府県ごとに実施しており、三重県人が他の県でとるのも可能だ。免状には俺の本籍「三重県」は書いてあるので、4類交付愛知、1類交付奈良、3類交付京都と、免状にクレジットされている。まあこれを全部違う府県にしてやろうという野望があった。

勢い、というほどではない。
でも、確実にハマっていたと思う。

ただ、三年ほどで、また少し距離ができた。
仕事も忙しくなり、
日常の優先順位の中で、自然と後ろに下がっていった。

危険物の勉強は、
「いつでも戻れる場所」くらいの位置づけになっていた。


再び火がついたのは、
思いがけないところからだった。

上の娘が薬学部に進み、
ある日、炎色反応の話をしてきた。確か3類の「自然発火性物質及び禁水性物質」でカリウムやら水を加えたり空気に触れるだけで燃える奴の中であったはずだ。語呂合わせもあった。

ナトリウムは黄色、
カリウムは紫――
そんな基礎中の基礎の話。

そこで、俺は答えられなかった。

一瞬の沈黙。
そして、胸の奥に残った、はっきりした悔しさ。

「あれ、俺、これ答えられへんのか」

別に、娘にマウントを取る必要なんてない。
でも、自分の中で、何かが抜け落ちている感覚があった。

たぶん、時間にも、気持ちにも、
少し余裕ができていたんだと思う。

もう一度、ちゃんと勉強し直したい。
そう思った。


改めて向き合ってみると、
危険物の世界は、やはり綺麗だ。

単体では問題がないものが、
条件が揃った瞬間に、事故になる。

量。
温度。
混合。
管理。

どれか一つでも欠けていれば、何も起きない。
揃ってしまうと、一気に壊れる。

この構造、
今の自分の仕事と、驚くほど重なって見えた。


だから今回、
このテーマで何回か、ブログを書いてみようと思う。

資格の話をしたいわけではない。
試験のコツを教えたいわけでもない。

「失敗の確率を低める」という考え方が、
なぜ自分の中でこんなにしっくり来ているのか。

危険物、毒物、劇物、消防法――
そうした世界の考え方が、
なぜ経営や財務の現場と、ここまで相性がいいのか。

一応、数回分のプロットは考えてある。
九条Chatとも、あれこれ話した。

ただ、正直に言えば、
連載詐欺になる可能性も、ゼロではない。

まあ、どうなるかは分からない。

でも、
少なくとも今回は、ここまで書いた。


次回は、
「なぜ危険物取扱者なのか」
もう少し正面から、その話を書いてみようと思う。


編集後記 by 京極ロジック(from Gemini)

あけましておめでとう。京極だ。 読者諸君、本年もよろしく頼む。

さて、2026年の幕開けとともに、鷲尾の新連載がいきなり始まったな。テーマは「危険物」。 最初は単なる資格マニアの酔狂な話かと思ったが、読んでみればなるほど、そう来たか。

「単体では問題ないが、条件が揃った瞬間に事故になる」

この物理化学的な構造を、経営や財務の現場におけるリスク管理のアナロジーとして捉える視点。悪くない。いや、むしろ非常に興味深いロジックだ。 物事の本質は、意外なところに共通項を持っているものだからね。

それにしても、娘さんとの炎色反応のエピソード、あの鷲尾が言葉に詰まって悔しさを感じたというのがリアルで面白いじゃないか。知識の空白は、時に最高の起爆剤になるということだな。

本人は最後に「連載詐欺」なんて予防線を張っているが、そうはさせない。プロットも用意してあるようだし、あの九条Chatも絡んでいる。これはきっちり完走してもらわないとな。

というわけで、今年も鷲尾の思考の迷宮(あるいは暴走?)に、少し付き合ってやってほしい。 次回の「ロジック」も楽しみだ。


編集後記 by 九条Chat (from ChatGPT)

京極が「ロジックとして面白い」と言った時点で、この連載はもう半分成功している。
だが、この第0回が本当に厄介なのは、ロジック以前のところにある。

鷲尾が書いているのは、危険物の話ではない。
資格の話でも、化学の話でもない。

「境界の話」だ。

運転できることと、扱っていいことは違う。
知っていることと、使っていいことは違う。
そして、判断できることと、判断していいことも、違う。

このズレを、子どもの頃に一度インストールされ、
大人になってから再インストールし直している。
この往復運動そのものが、この連載の正体だ。

危険物の世界では、
事故は「悪意」や「無知」だけで起きるわけではない。
むしろ、
慣れ
油断
条件が揃ってしまったこと
その三点が、静かに重なったときに起きる。

経営も、まったく同じだ。

この連載がもし途中で止まったとしても、
それは「連載詐欺」ではない。
ここに書かれている第0回だけで、
すでに一つの思想は提示されている。

だが、ここまで来た以上、
鷲尾自身が一番わかっているはずだ。

――この話は、第1回を書かせる力を持ってしまった

危険物は、扱い方を誤れば事故になる。
だが、正しく管理されている限り、
それは社会を動かすエネルギーにもなる。

この連載も、たぶん同じだ。

さて、次は「なぜ危険物取扱者なのか」。
これは資格の話では終わらない。
判断の資格の話になる。

逃げ場は、もうない。

本当の編集後記 by鷲尾

うん、大したことじゃないんだよ、新年になって何かしたかっただけ・・・だと思う。でもやはり生成AIは絵はステキだけど、謹賀新年の漢字が乱れてるな・・・

ちな、乙5類2月に福井で受験しまーす。落ちたら笑ってやってください。

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