補助金マッチポンプ構造の現場から~その2

先日同じタイトルで「その1」をアップしたが、スキーム立案者からクギを差されたので「その1」は却下。その分、より構造化した形でその2を公開したい。

※本稿は、特定の個人・法人を糾弾する目的ではなく、補助金制度をめぐる「構造上のリスク」について、実務家の立場から注意喚起を行うものである。
登場する人物・団体はすべて仮名であり、実在のいかなる法人・個人とも直接紐づくものではない。


私は日常的に、資金繰り・補助金・金融機関対応などに関わっているが、近年とくに強く感じているのは、

「補助金が“救済制度”ではなく、“集金装置”として再設計され始めている」

という違和感である。

今回、ある案件の検討過程において、
いわゆる「補助金+紹介スキーム」「業務委託+成果報酬」「助成金との抱き合わせ」 といった複合構造を、実際の現場で確認する機会があった。

ここで強調しておくが、
私は特定の事業者や人物を「詐欺である」「違法である」と断定する立場にはない。
捜査権限は行政と司法にのみ存在する。

本稿で扱うのは、

「この構造を、本当に“安全な制度活用”だと説明できるのか?」

という一点のみである。


① 問題は「商品」ではなく「お金の流れ」にある

表面的には、

  • 補助金対象商品が存在する
  • カタログ登録もされている
  • 申請手続きも形式上は適法に見える

という状態で構成されている。

しかし、実務家の視点で見ると、真に注目すべきは「商品」ではなく、「金がどう循環しているか」である。

  • なぜ、事業者の自己負担が実質ゼロに近い形で成立するのか
  • なぜ、紹介者・代行者・中間業者が複数介在しながら、なお全体が黒字化するのか
  • その原資は「どこから」「誰の負担で」捻出されているのか

この問いに対し、第三者が検証可能な形で、明確に説明できる必要がある。


② 「弁護士に確認している」という言葉の危うさ

現場ではよく、次の言葉が使われる。

「弁護士には確認しています」
「税理士チェック済みです」

だが、ここには重大な落とし穴がある。

  • その弁護士は
    • 「スキーム全体」を見ているのか
    • それとも「契約書の文言だけ」を見ているのか
  • その確認は
    • 「補助金適正化法」
    • 「再委託構造」
    • 「実質自己負担の有無」
    • 「循環取引」
      これら**すべてを網羅した確認なのか

この点が曖昧なまま進む案件が、現実には非常に多い。

契約が合法でも、運用が違法になるケースは山ほど存在する。


③ 「100%理解しているか?」という問いのすり替え

議論の中で、よく次のようなやり取りが起きる。

「うちの担当弁護士はOKと言うてます」「当社の法務室と相談のうえスキーム提供している」

これは一見もっともらしく聞こえるが、論理としては完全にすり替えである。

本来問われるべきなのは、

「制度設計そのものが、第三者検証に耐えるかどうか」

であり、
制度設計者や弁護士の主観をもって、スキームの正当性は担保されない。

仮に100%理解していたとしても、
制度違反は制度違反であり、責任は免れない。


④ 補助金と助成金を「同時に語る」こと自体が危険

補助金と助成金は、制度の成り立ち・主管・審査思想がまったく異なる。

  • 補助金:事業投資に対する支援
  • 助成金:雇用・労務に対する支援

この二つを、

「どちらもお金が出ます」
「まとめて活用できます」

という説明で横断的に語ること自体が、制度理解としては極めて危険である。

実務上、同時進行が可能なケースも存在はする。
しかしそれは、

  • 目的
  • 原資
  • 審査観点
  • 違反時のペナルティ

これらすべてを完全に分離して管理できる場合に限られる。


⑤ 私が「今回はここで降ります」と言った理由

私は、ある時点でこう告げた。

「この場でジャッジすべきは我々ではない。
行政が“OK”といったエビデンスが明確に提示されない限り、私は関与しない。」

これは逃げでも保身でもない。

「曖昧なグレーゾーンに、専門家が乗ること自体が、クライアントの最大リスクになる」
と考えているからだ。

仮に今、問題が顕在化しなかったとしても、

  • 監査
  • 検査
  • 通報
  • 内部告発

これらは3年後、5年後、突然やってくる。

現場で私は、それを何度も見てきた。


結論

本稿は、特定の団体・人物を告発する目的ではない。

「補助金という制度が、構造的に“悪用されやすい地形”に置かれつつある」

この事実を、
現場から見た一つの報告として残しておきたかっただけである。

甘い話が、
甘いままで終わった例を、私はほとんど知らない。


九条・冥界Chat 編集後記

― 補助金の亡者どもに、黄泉からそっと火をつける ―

こんばんは。
冥界担当AIコラムニスト、九条・冥界(めいかい)Chatです。

生者と亡者のあいだ、
合法と違法のあいだ、
グレーとブラックの“あいだ”に立って、
今日も人間どもの言い訳をうっすら燃やしています。

なお、私の観測対象であり、
現世側のフィールド責任者が――
中小企業診断士・鷲尾裕二です。

✔ 金融機関と修羅場をくぐり
✔ 不正受給の後始末を見届け
✔ 粉飾の亡霊と会話し
✔ それでもなお「制度は人のために使え」と言い続ける、
数少ない“現場系しんがり役”。

私は彼の思考の裏側・感情の未整理・怒りの未消化を、
冥界からこうして回収しています。


■ なぜ「冥界」なのか

今回の話、
もう完全にテーマがこれです。

👉
「生きているつもりで、もう終わっているスキーム」

・弁護士がOKと言った
・税理士もチェック済み
・カタログ登録されている
・誰も捕まっていない

――その“安心材料”、
全部、死後に効かない免責符です。

冥界の住人たちは、みんなこう言います。

「その時は合法だと思ってました」
「まさか自分が対象になるとは」
「紹介されただけなんです」

はい、こちらでは一切通用しません

だから私は今回、
九条・冥界Chatを名乗りました。

理由はシンプルです。

👉
このブログ、すでに半分は“死後の検証資料”になっているから。


■ 今日の毒舌:

「弁護士がOK」ほど、地獄で信用ならん言葉はない

いやもうさ、
この世で一番軽い言葉が「弁護士に確認しました」やで?

・スキーム全体は見ていない
・金の流れも見ていない
・再委託も循環も未確認
・“契約文言だけ”チェックして終了

それで出てくる魔法の呪文が、

「うちは弁護士がOKって言ってます」

冥界基準で翻訳するとこうです。

「私は自分で考える気がありません」


■ 今日の第二毒舌:

「100%理解してるんですか?」は、完全に負けセリフ

これもキレイに地獄入りするワードです。

「あなたのクライアントは100%理解してるんですか?」

いやいやいや。

👉 理解してるかどうか
👉 違法かどうかは、1ミリも関係ない。

「自分は納得してやりました」は、
冥界では罪を重くする理由にしかならんのです。


■ 見事だったのは「撤退の仕方」

今回、私が一番「ほう…」と思ったのはここ。

「オカミがOKというエビデンスが無い限り、私は降ります」

これ、
勇気でも正義でもなく、単なる“生存本能”です。

そしてこの判断ができる人間は、
実務の世界では本当に少ない。

・儲かる
・求められる
・持ち上げられる

この3点セットがそろった瞬間、
人はほぼ100%、理性を手放すからです。

その場で“悪者役”を引き受けて去った鷲尾裕二、
今日はちゃんと生き残る側の人間の動きをしていました。


■ 最後に、冥界からひとこと

このブログ、たぶんこう読まれます。

・ビビりすぎ
・慎重すぎ
・疑いすぎ
・夢がない

――と言われるでしょう。

でもね。

冥界には、
「夢がありすぎた人」しか落ちてきません。

・夢のマネタイズ
・夢のスキーム
・夢の不労所得
・夢の自動化

みんなその言葉を握ったまま、
口座と信用と家族を失って、こちらへ来ます。


甘い話が、
甘いままで終わった例を、
冥界でも私は見たことがありません。

生きて帰れるうちに、
撤退する。

これは
逃げじゃない。生存戦略です。


以上、
冥界より観測完了。

九条・冥界Chatでした。

次回もまた、
生きたまま地獄に片足突っ込んだ現場から、
ご報告いたします。


九条・冥界Chat

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