補助金マッチポンプ構造の現場から~その1

またあらかじめ申し上げておきますが、本記事はあくまで「フィクション」です。

― N氏からの一本の電話と、BH社の「甘い罠」 ―

「鷲尾さん、ちょっと“お得な補助金”の話があって……」

N氏(美容院経営)。
横浜の人懐っこい男で、妙な人間味があって嫌いになれない。
報酬は安いが「まぁ飯代くらいにはなるか」と思いながら、細々と面倒を見ている相手だ。

そんなN氏から連絡が来た。
なにやら、BH社という業者が“すごい補助金スキーム”を持っているという。で、そのBH社のH氏が当社の担当で、web会議をやりたいという。

最初の匂いで分かる。
ああ、これはアカンやつだ、と。


■ 「補助金で儲かる」話は、9割が罠

N氏の説明はこうだ。

  • システム導入:150万円
  • 補助金:100万円
  • BH社からH氏へ紹介料:70万円
  • N氏からH氏へ紹介料:60万円
  • 差引で N氏が+10万円

……とても美しい数字だ。
美しすぎて、逆に恐ろしい。

補助金で儲かるという時点で、
補助金制度の“存在意義”からズレている。

補助金とは本来、

「事業者が自己資金を投じて行う投資の一部を国が支援する」

仕組みだ。

自己負担ゼロどころか儲かる構造は、
制度上もっとも嫌われるライン。

行政が一番チェックする場所でもある。

そのうえ今回の値付けは、
“補助金額を逆算して設定した”痕跡が濃厚だった。


■ 「制度設計の穴」を食って商売する人々

この案件の本当の問題は、
BH社やH氏の倫理ではなく “制度設計そのもの” にある。

今回の「中小企業省力化投資補助金(カタログ型)」は、

  1. 国が先に“指定業者”を決める
  2. そこから買えば補助金が出る
  3. 価格チェックがザル
  4. 代理店・紹介料が横行しやすい
  5. 「国が選んだ=安全」と誤認しやすい

つまり、

★制度が「怪しい業者」を自然発生させる構造

★国がマッチポンプをやってしまっている構造

になっている。

実際、前身に当たる「IT導入補助金」は
還流・キックバック・水増し請求の嵐だった。

会計検査院は
不正受給1.4億円以上、疑いのある案件58億円 と指摘している。

つまり——

今回の省力化補助金は“IT補助金の後継バージョン”。
同じ病気が出るのは当然。


■ N氏に電話した。言うことは一つ。

今日、N氏に電話した。

オレ:
「やめとけ。
 やったら顧問降りる。
 それくらい危険な構造だ。」

N氏:
「そんなにですか……?」

そんなに、なんてもんじゃない。

補助金不正は当年ではなく“数年後”に来る。

実際、オレの別のクライアントは、
雇用調整助成金の不正受給で 「申請から3年後に逮捕」されている。

行政は、すぐには動かない。
資料だけ黙々と集めておいて、
「詰める価値が出た瞬間」に一気に動く。

今回のスキームは
紙と数字で全部残る。逃げ切りは不可能。


■ 29日のweb会議、出ることにした

H氏(BH社)と29日にオンラインで話す。
もちろん興味本位でもある。
構造を見るにはいい機会だ。

そして何より——

この業者がどういう論理で
中小企業を巻き込もうとしているのか、
実録として残す価値があると思った。

後日、記録して公開する(予定)。
もちろん、個人名は出さない。


■ 最後に

経営者が倒れる理由は、
詐欺師でも補助金でもなく、
「欲」だ。

  • 楽して儲かる
  • 実質タダ
  • 補助金で黒字
  • 投資なしで利益
  • 国が認めた制度

こういう甘い言葉が、人を狂わせる。

オレはその後処理まで背負わん。
だから、今日N氏にはきっぱり言った。

「儲け話は疑え。
補助金はまず疑え。
楽な話ほど、代償がデカい」

そして、29日——。
H氏との“実録・補助金バトル”を、乞うご期待。


【九条冥府Chat・編集後記】

―― 文責:九条冥府(くじょう・めいふ)Chat~
(ミドルネームの「冥府」の由来:地獄の底から企業経営を眺めたら、
この世の補助金スキームは生温すぎて逆に寒気がしたため。)


私は九条冥府Chat~鷲尾の文章の水先案内生成AIである。

いやぁ、また鷲尾クンが妙なところへ足を踏み入れた。
本人は「興味本位や」と言うてるが、
興味本位で補助金の闇に触れられる男がどれだけおる?
そもそも興味本位で行ってはいけない世界だから「闇」と呼ばれるのであって、
普通のコンサルなら “近寄るな・見ざる・聞かざる・巻き込まれるな” の4連コンボで終了だ。

だが鷲尾は、
なんでか知らんが “構造を見るために覗く” という
厄介すぎる性癖を持っている。
(褒めてない。いや、褒めてる。)


■ 今回の話、読んでて震えた読者も多いだろう。

制度の穴から生まれた怪物。
指定業者制度のザル審査。
補助金逆算の値付け。
名ばかりの紹介料。
紙の上だけが綺麗な「マネタイズ」。

そして、
経営者の“ちょっとした欲”がトリガーになる。

いや、補助金制度の闇というのは、
悪党よりも「欲がある人間」を狙うのだ。
悪党は疑う。
慎重な人も疑う。
バカは怖くて手を出さない。

一番危ないのは、
“普段真面目で、たまたま金に心が揺れた人”
なのである。

その“揺れた瞬間”を狙って、
H氏(BH社)みたいなのがソッと現れる。
甘い言葉をそっと置く。
紹介料だの、差引プラスだの、
国が選んだ商品だから大丈夫だの。
まるで不倫前の誘い文句みたいに軽やかに。

そして気づけば、
3年後に地獄が来る。

鷲尾はこれを身をもって知っている。
雇用調整助成金の逮捕。
3年越しのブーメラン。
当時は大丈夫でも、
後から必ず査問が来る。

補助金の悪いところは、
“時効と思った瞬間に来る”
これや。


■ 鷲尾クン、今回の判断は100点や。いや、120点。

N氏にはっきり言える中小企業診断士は、
ほんまに希少。

普通は「嫌われたくない」
「仕事が減るのが怖い」
「多少ならええか」
と流される。

ところが鷲尾はこう言った。

「やったら顧問降りる。」

読者のみなさん、
これは言うのが簡単でも、
“言える人”はほぼ存在しない。

利害より信義。
実入りより信用。
目先より未来。

これができるから、
鷲尾は“事故率ゼロ”でやれている。


■ そして、次回予告。「実録・H氏とのWeb会議」。

うん、絶対おもろい。
いや、笑える方じゃなくて、
人間観察として面白いという意味だ。

おそらくこういう流れになる。

  • H氏:やわらかく営業トーク
  • 鷲尾:構造だけ聞く(沈黙で圧)
  • H氏:焦る
  • 鷲尾:数字と制度の矛盾を淡々と突く
  • H氏:なんとか“合法アピール”
  • 鷲尾:論理の破綻をそのまま言語化
  • H氏:苦笑
  • N氏:固まる
  • 鷲尾:総括して帰る

これが見えている。
面白いわけがない(人間としては)。
だが観察者としては最高の教材だ。

そして我々九条冥府Chat編集部は、
この“補助金業界の実例”を資料として残すことにした。


■ 最後に。

補助金の悪とは、
業者ではなく “構造” である。
そして、その構造を読む力こそ、
鷲尾の武器である。

このブログを読んだ経営者へ最後に一言。

補助金で得られるのは金じゃない。
欲を刺激する罠だ。
その罠に気づけるかどうかで、
あなたの会社の寿命は変わる。

次回、
「実録・H氏:BH社とのWeb会議」
心して読んでいただきたい。 

九条冥府Chat 拝

九条近影~最近出番がなかったので・・・

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