銀行だけが悪いのか?経営者にも言わせてくれ ~支援者としてのバランス感覚~

なんか連続して、他者批判の記事なんだけど、うーん、何だろう、やっぱストレスたまってるのかな?いや私がやっていることが正しい、というわけではないんですが、どうもですな・・・

■いや、なんか、もやもやするんです。

某SNSでよく見かける、某元銀行員コンサルさんのご高説について。

著書もあって、そりゃー私と違って経験豊富な優秀な金融マンだったのね、というのは、古巣の金融機関での仕事をされてるのでよくわかるし、それが間違ってるわけじゃない。経験に基づいた話も多い。
けれど、どうにも「評論家の説法」みたいに感じてしまうんです。

それって本当に、現場の匂いがしてるんですか?

銀行職員に向けての怒りや嘆き、こうあったらいいのに・・・は書き連ねる。で、それを俺は是正するために銀行行って、銀行員をしごいてる。
でも、企業経営者側への視点は見えない。
口調は厳しく、言っていることは一見正論だけど、なんというか、
「両側から汗をかいてる人間」の言葉には感じないんです。


■どうにも腑に落ちない“偏り”

語られていた氏の投稿、たとえばこんな感じ:

  • 経常運転資金も知らない銀行員がいる
  • (元銀行員のユーチューバー)与信経験が浅いのにYouTubeで偉そうに語っている
  • 銀行は交渉相手じゃなくてパートナーであるべき
  • 業推無罪(=営業推進は正義)の文化が未だにはびこってる

……うん、言いたいことはわかる。
でも、なんだかなんだかなんですよ。

銀行にばかりダメ出しして、経営者には何も言わんのか?


■「やってます感」のための勉強会? そんなもん、いらん。

でね、正直ちょっと思うわけですよ。
こういう方を講師として金融機関に招いて「勉強会」って……それ、ほんとに実務の役に立ってるの?って。

いやさ、確かに氏の言う「経常運転資金」は大事。概念も覚えるべきだし、融資の原点とも言える部分。
でもね、それを本当に理解するって、
「切羽詰まって、現場で必死に覚える」
ってプロセスがないと、腹落ちしないんじゃないかって。

それを棚に上げて、「講師を呼んでる俺たち、ちゃんとやってます」ってアピールするだけのための勉強会。
……そんなもん、やってるフリだけの「アリバイ作り」にしか見えないこと、あるんですよ。

あ、ちなみに私も今度、某金融機関で支店長を集めた勉強会で講師やらせてもらいます(爆)。
もちろん支店長には、こちらからもズバズバ申し上げるつもりです。
でも一方で、「支援企業に対しても、あなたたちから苦言を呈しなさい」と言うつもりでもあります。
金融機関も、支援先企業も、お互いに甘え合ってたら何も変わらない。
その関係性に風穴をあけるのが、本当の意味での“勉強会”なんじゃないかって、私は思うわけです。


■金融マンよ、学べ。でも経営者も学べ。

私は今、経営者のすぐそばにいます。
同時に、金融機関の現場にも足を運び、支店長や担当者たちとも話をしています。
だからこそ分かるんです。
どちらも正しい。どちらも間違ってる。

金融マンには、もっと学びが必要です。本やマニュアルじゃなく、現場で泥をかぶるような経験が。
言葉で理解するんじゃない、顔を突っ込んで汗をかいて初めてわかる経営のリアルがある。
数字を並べるだけでなく、その数字の背後にある社長の寝られぬ夜や、社員を守ろうとする決断の重さを感じてほしい。

でも、それと同じくらい、いや、時にはそれ以上に、
経営者にも言いたい。
「銀行がカネ貸してくれない」「税理士が教えてくれない」「景気が悪い」――
もう、そんな“他責思考”はやめませんか。

資金繰りが苦しい。売上が落ちた。人が足りない。
みんなつらいんです。みんな自分の立場で戦ってる。
でもだからこそ、自分のことは自分で引き受ける
その覚悟を持たないと、何も始まらない。

最近は「銀行が何もしてくれない」なんて論調も散見されます。
でもね、そもそも他人に期待しすぎなんです。
それは、依存です。自分で経営をする、という自覚が足りない。

そして支援者である私たちは、その真ん中に立たされる。
右を向けば銀行、左を向けば経営者、どちらも口を開けば不満ばかり。

でも、私は思うんです。
それこそが、支援者の本質的な役割なんじゃないか、と。
両者の板挟みになることでしか見えない風景がある。

経営者の情熱と情報の弱さ。
金融マンの論理と不器用さ。
その両方の「愚かさ」と「素晴らしさ」を見てきたからこそ、
私はあえて、「どっちにも文句を言う」役割を引き受けたい。

それは正直、しんどい立ち位置です。
嫌われもします。どっちつかずと言われることもあります。
でも、誰かがやらなきゃいけないことだと思うんです。

そうでなければ、変わらない。誰かがどちらかに寄り添いすぎた瞬間に、バランスが崩れる。

だから、どっちにも言う。どっちにも刺す。
それが、これからの支援者に求められる姿勢じゃないでしょうか。

(鷲尾注、いやーChatGPT君すごいこと言い切ってくれますね・・・)


■評論家と実務家の違い

今回話題にした、某銀行OB氏。
発言は、まあ立派です。私と違って文字の並びも整ってる。言ってることもおおむね正論。
でも、どうしても感じてしまう。
「上から目線の評論」だなって。

たしかに、この方には知識もあるし、実務経験もあるでしょう。
でもね、それを語る「温度」が伝わってこない。
誰に向けて? 何のために? どこで、誰と、どういう現場で、その言葉を使ってきたの?
……そこが見えないんです。

たとえば「経常運転資金」の重要性。
それを否定するつもりは毛頭ないです。
私だって経営支援の現場で、運転資金の本質をどう伝えるか、腐心してる側の人間です。

でも、本当に大事なのって、
「概念」じゃなくて「実感」なんですよ。

現場で血を流してる企業の社長が、資金繰りに窮して、実際なんで売上上がってるのに、現金が残らないんだろう、って。いろいろなパターンはある。
例えば私がこないだあった事例は
「売上上げるために在庫を増やした」
という事例。そのときに、「経常運転資金とは…」なんて講釈は要らない。その実際の事例の中で、ではどうする?の方が大事で
「それは社長、経常運転資金が増加したからですよ!」
って金融マンにドヤ顔で言われたら、オラ、殴っちまいますよ、まじで。じゃなんとかせいや!とか思う。

その概念が腹に落ちるのって、その事象を「自分事」として捉えたうえで、
「切羽詰まって、必死に、現場で、痛みとして覚える」瞬間なんですよ。
教科書やレジュメで覚えるもんじゃない。
で、一番大事なのは

ことなのは間違いない。もしカネ貸せないなら、貸せない理由をいうて、代替案を示す。

それを、です。
金融機関が「偉い先生」呼んで、立派な勉強会して、「やってます感」出す。
わかりますよ、気持ちは。
でもね、そういう会合で本当に現場が変わったのを見たことが、私はない。

あ、ちなみに私も今度、支店長を集めた勉強会で講師をやります(爆)。
でも私は、偉ぶるつもりはありません。支店長に対してはズバズバ苦言も申し上げます。
その代わり、言いますよ。
「支店長、取引先の経営者にちゃんと苦言を言ってくださいね!」って。

支援者って、現場の「両側」に立たなきゃ意味がないんです。
金融機関側の言い分もわかる。事業者の事情も痛いほどわかる。
だから、どちらにも“愛ある毒”を吐く。
その覚悟と中立性がないと、ただの「評論家」でしかない。

支援者にとって一番大事なのは、
「現場の匂いをまとっているかどうか」だと思う。
現場の泥を踏んでいるか。汗にまみれた人の声に耳を傾けてきたか。
そういう生身の経験がないと、どんなに言葉が上手くても、ただの空論なんですよ。

だからこそ、「やってます感」のための勉強会なんて、もうやめちまえ。
本気で企業を支えたいなら、
きれいな言葉じゃなくて、
どれだけその経営者に“向き合えるか”が問われる時代だと思いますよ。


■まとめ:口だけ評論より、現場で汗かく方がずっとダサくて、かっこいい

銀行が悪い、銀行員が無知――そういう発信は受けやすいし、共感もされる。
でも、それって結局「自分は安全な場所にいる」ってことの裏返しじゃないか?

私は、どちらにも耳の痛いことを言う。
それが、支援者の役割だと思っているから。

そして、最後にこれだけは言いたい。


【編集後記】

実は、私も金融機関の職員で長らく融資の責任者をやらされておりました。

でね、私の今の仕事、いわゆる「コンサルタント」って大・・・・嫌いでした!
一言でいうと「ひとごと」なんですよね。経営不振に至ってワラをもつかむ思いで、コンサルに依頼する、前金で●百万円払う。でそれはそれはデザインが秀逸、見目麗しい「経営改善計画」が出来てくる、バンクミーティングで大々的に発表する、で、銀行/経営者双方に

「やりました感」

は出る。で、1年間決算が出るまで放置、で、決算が出たら・・・

状態になって結果が出ない・・・という感じになってしまう例を色々見てきました。

それを防ぐために定期的(1ヶ月毎)に経営者のおケツを叩くことも私の仕事だと思います。

一方経営計画の立て方も経費節減が主体で、売上・利益増強の施策はなし、っていう計画も見たことがある。今どうなっているか知らんが。

そんな感じで、私は耳の痛いこと結構言います。

でもね、昨晩もそういう耳の痛いことを電話でクライアントでもある経営者に話してたんですが、苦言が重要だ、と、私を支持していただける経営者も増えてきたのはありがたい限りです。

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